佐藤優氏を知るために、初期の著作を読んでみました。
今回は、この本です。
佐藤優『十五の夏-1975(上・下)』

1975年、高1の夏休み。僕はたった一人でソ連・東欧を旅行した。
『何でも見てやろう』『深夜特急』につづく旅文学の新たな金字塔。
出会い、語らい、食べて、飲んで、歩いて、感じて、考えた。
少年を「佐藤優」たらしめたソ連・東欧一人旅、42日間の全記録。
『十五の夏』という本は、書評にもあるように、佐藤優氏が15才の高1の夏休みに、たった一人でソ連・東欧を旅行したことの記録です。
それが、『何でも見てやろう』『深夜特急』につづく「旅文学の新たな金字塔」といえるほど文学的に優れたものかどうかの判断は保留しますが、この旅が、いろいろな面で佐藤氏の人格形成に影響を与えたことは確かでしょう。
以下、かいつまんで紹介します。
『十五の夏』
□第1章 YSトラベル
□第2章 社会主義国
□第3章 マルギット島
□第4章 フィフィ
□第5章 寝台列車
■第6章 日ソ友の会
□第7章 モスクワ放送局
□第8章 中央アジア
□第9章 バイカル号
□第10章 その後
第6章 日ソ友の会
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(つづきです)
打ち上げの中華レストランは会場から徒歩10分くらいのところにあった。中国人が経営している高級店だ。篠原さんは、フロアマネージャーと中国語で話している。
「篠原さんは、ロシア語だけでなく、中国語もできるんですか」と僕は尋ねた。
「だいぶ錆びついているけれど、陸軍ではロシア語とともに中国語を叩き込まれた。もっとも中国語を使う機会は、レストランを予約するときしかないけどね」と言って篠原さんは笑った。
大きな丸テーブルに十数人が座った。丸テーブルは回転する。両親に連れられてときどき行く大宮公園の国体記念会館地下の中華レストランにも回転する丸テーブルがあったが、5~6人用だった。こんなに大きな回転式テーブルを見るのは、生まれて初めてだ。
「本当はロシア料理の店で打ち上げをやりたかったのだけれど、東京には本格的なロシア・レストランがないので、中華料理屋にしました。そう遠くない時期に「日ソ友の会」主催のソ連訪問団を組織するので、本格的なロシア料理はそのときに食べることにしましょう」と篠原さんが言った。
ウエイターがまずビールを運んできた。
「モスクワのレストランではビールが出ない。いつも淋しく思う」と篠原さんが言った。
「ロシア人はビールを飲まないんですか」と僕は尋ねた。
「大好きです。ただし、高級レストランでの飲み物とはされていません」と日下さんが言った。
「その代わり、シャンペンを飲むね」と茨城大学の佐藤先生が言った。
「そう。シャンペンは冷えているんでおいしいね」と日下さんが言った。
「佐藤君は、ジュースかコーラだね」と篠原さんが尋ねた。
「コーラをお願いします」と僕は答えた。
僕はコーラ、それ以外の人はビールで乾杯した。
テーブルには、クラゲ、焼き豚、蒸し鶏、ピータン、白菜の漬け物、キュウリの漬け物などが大量に並べられている。かなり値が張りそうだ。さらにウエイターが老酒や白酒を運んでくる。
「この店にはいいマオタイ酒がある。ウオトカよりも度数が高い。試してみるといい」そう言って、篠原さんはマオタイ酒を勧めた。
ここに集まっている人の半分は、「日ソ友の会」の事務所で見たことがある。残り半分は、まったく知らない人で、年齢も50代以上だ。しっかりした身なりの人もいれば、よれよれのジャンパーを着た人もいる。自己紹介もしなければ、篠原さんが参加者について説明するわけでもない。ただひたすら、美味しい酒と食事を楽しんでほしいという会合のようだ。
続いて、北京ダックが出てきた。話に聞いたことはあるが、初めて実物を見た。
「北京ダックは初めてか」と篠原さんが尋ねた。
「はい。テレビで見たことはありますが、食べるのは初めてです。ソ連でもよくあるのですか」
「ソ連にはないと思う。どうだろうか」と篠原さんが日下さんに尋ねた。
「確か、1950年代、中ソ関係が良かった頃は、モスクワのレストラン・ペキンでペキンダックが出たと言います。いまのレストラン・ペキンには中国人のコックは一人もいません。得体のしれない料理しか出てきません。そもそもロシア人は食事に関しては保守的なので、中華料理には馴染まないと思います」と日下さんが説明した。
男性たちは、マオタイ酒や老酒を大量に飲んで、だいぶ酔いが回ってきたようだ。会合は和気靄々とした雰囲気で進んでいたが、突然、ジャンパー姿の男性が中腰になって立ち上がり、隣の席にいる人を怒鳴りつけた。一瞬、空気が凍った。怒鳴りつけられたのはいつか事務所で会った 演劇を専攻する早稲田大学の学生だった。
【解説】
その後、佐藤少年は中華レストランの打ち上げのパーティーに連れて行かれます。
おいしい料理が並び、楽しい会食が続きますが、突然……
獅子風蓮
