獅子風蓮のつぶやきブログ

創価を卒業し、組織にしばられず、いろいろ考えたりしたことや、読書感想などを書いています。

池上彰/佐藤優『プーチンの10年戦争』を読む その25


佐藤優氏のことば。

言うまでもないことですが、ロシアがやっていることは間違っています。独立国家であるウクライナにいきなり軍事侵攻を仕掛けるなど、どんな理由があっても既存の国際法では認められません。
そのうえで、ロシアにはロシアの論理がある。プーチンの演説を丹念に読み解く作業を通じて、読者の皆さんには「プーチンの内在的論理」に耳澄ませてほしいのです。私たちは「ウクライナ必勝」と叫ぶ必要はないし、プーチンを悪魔化して憎むのも良くない。両国で暮らす一人ひとりの人間に思いを致し、一刻でも早く戦争をやめさせなければなりません。

そこで「ロシアの論理」を知るために、こんな本を読んでみました。
一部、かいつまんで引用します。

池上彰佐藤優プーチンの10年戦争』(東京堂出版、2023.06)

日本では詳しく報じられたことがない20年にわたるプーチンの論文や演説の分析から戦争の背景・ロシアのねらいを徹底分析。危機の時代の必読書!1999―2023年のプーチン大統領の主要論文・演説、2022年のゼレンスキー大統領の英・米・日本国会向けの演説完全収録!

 

プーチンの10年戦争』

□はじめに ジャーナリスト池上彰
□第1章 蔑ろにされたプーチンからのシグナル
■第2章 プーチンは何を語ってきたか
 __7本の論文・演説を読み解く
 □①「千年紀の狭間におけるロシア」(1999年12月30日)
 □②「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」(2021年7月12日)
 □③大統領演説(2022年2月21日)
 ■④大統領演説(2022年2月24日)
  □アメリカは「嘘の帝国」
  ■ウクライナ侵攻は国家存亡を賭けた戦いである
  □戦争の行方はアメリカ次第

 □⑤4州併合の調印式での演説(2022年9月30日)
 □⑥ヴァルダイ会議での冒頭演説(2022年10月27日)
 □⑦連邦議会に対する大統領年次教書演説(2023年2月21日)

□第3章 歴史から見るウクライナの深層
□第4章 クリミア半島から見える両国の相克
□終 章 戦争の行方と日本の取るべき道
□おわりに    佐藤 優
□参考文献
□附録 プーチン大統領論文・演説、ゼレンスキー大統領演説

 


第2章 プーチンは何を語ってきたか
 __7本の論文・演説を読み解く

④大統領演説(2022年2月24日)

ウクライナ侵攻は国家存亡を賭けた戦いである

佐藤 もっともプーチンからすれば、日本は「嘘の帝国」の中ではたいした役割を演じていないという認識ですからね。その上で、あらためて地政学に言及しています。

北大西洋条約機構の軍備のさらなる拡大、ウクライナの領土で始められた軍事開発は我々にとって受け入れられないものである。(略)我が国に接している領土に――我々の歴史的領土だと指摘しておくが――我々に敵対的な「反ロシア」が形成されていることが問題なのだ。この「反ロシア」は、外部からの完全な管理下に置かれ、NATO諸国の軍隊によってしっかり固められ、最新兵器が注ぎ込まれている。
アメリカとその同盟諸国にとって、これは、いわゆるロシア封じ込め政策であり、明らかな地政学的配当なのだ。一方、我が国にとっては、これは最終的には生きるか死ぬかの問題、民としての我々の歴史的未来に関わる問題なのである。これは誇張ではなく、実際そのとおりなのだ。これは、単に我々の利益のみならず、我々の国家の存在自体、その主権に対する真の脅威なのである。これは、何度も語ってきたレッドラインそのものなのだ。彼らはそれを越えたのである。〉

池上 このあたりが、日本や西側の報道と180度違うところですね。「ロシアは侵略国家だから、その横暴を許してはならない」というのが西側の一般的な見方です。一方、ロシアにとっては、西側の脅威がいよいよ限界を超えたから、国家存亡を賭けて戦うんだと。

佐藤 そういう決意表明をするわけですが、興味深いのは「我々の計画には、ウクライナの領土の占領は含まれていない」と述べていることです。そして次のように言います。

〈我々の政治の根底にあるのは、自由、すべての人にとっての自身の将来、自身の子どもたちの将来を自ら決めるという選択の自由である。そして、こうした権利、選択の権利を、今日のウクライナの領土で暮らすすべての民、これを欲するすべての者が行使できるようにすることが重要なのだと我々は考える。〉

これを実現するには、併合するしかありません。つまり、占領は考えていないが併合は考えていると。開戦時点で、併合を視野に入れていたわけです。

池上 そういえば侵攻前の2022年2月21日、ロシアの安全保障会議が異例に公開で行われたとき、一つのやりとりが話題になりました。テーマはドネツク・ルガンスクの国家承認の是非で、たいていの参加メンバーはプーチンの意向に賛成する中、ナルイシキンSVR(ロシア対外諜報庁)長官だけが異を唱えるんですよね。「ミンスク合意の履行を西側に促して最後のチャンスを与えては?」と。
そこからプーチンの詰問が始まって、ナルイシキンはなぜか「ドネツク・ルガンスクのロシア併合を支持する」と答える。「そんなことは聞いていない」とプーチンは苛立つわけですが、プーチンに近いナルイシキンが適当なことを言うはずがない。むしろプーチンに忖度し過ぎて、すでに政権内部で固まっていた方針を吐露してしまったのでしょう。

佐藤 今の時点から振り返れば、すべて併合に向けたシナリオに従って進んでいたわけです。
おそらく次に考えているのは、ゼレンスキー政権を降伏させてノヴォロシア全域を併合することでしょう。それを想定しているから、インフラをなかなか傷つけない。オデーサも攻撃や破壊をしていませんよね。それは征服後に使いたいから。マリウポリのようにはしたくないのです。
だから今でも、ウクライナには天然ガスを供給しています。これを止めれば簡単に勝敗は決するでしょうが、その後の統治のことを考えると得策ではない。国民生活を破壊することは大義名分に反するし、反ロ感情を高めてしまうことにもなりますからね。
ただし、天然ガスに色はつけられないので、ウクライナ側は民生用より軍事用に優先して使うでしょう。そうするとますます戦闘が激化・長期化することにもなる。

 

 

 


解説

佐藤 そういう決意表明をするわけですが、興味深いのは「我々の計画には、ウクライナの領土の占領は含まれていない」と述べていることです。そして次のように言います。

(中略)

これを実現するには、併合するしかありません。つまり、占領は考えていないが併合は考えていると。開戦時点で、併合を視野に入れていたわけです。

 

あくまでロシア・プーチンの側に立った主張ですが、賛同するわけにはいきません。

 

獅子風蓮