獅子風蓮のつぶやきブログ

創価を卒業し、組織にしばられず、いろいろ考えたりしたことや、読書感想などを書いています。

友岡雅弥さんの「異者の旗」その42)大船渡教会に集った人々

友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」より

いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。

 


カテゴリー: WAVE MY FREAK FLAG HIGH

ギターの歴史を変えたジミ・ヘンドリクス作曲の“If 6 was 9”の歌詞の中に出てくる言葉をヒントにしています。
(中略)
この曲は、そういう「違う生き方」を象徴する曲とされています。「異者の旗を振ろう」という意味ですね。
このタイトルのもとで、繁栄のなかの息苦しさを突破する「違う生き方」の可能性、また3.11以降の社会のありようを考える哲学的、宗教的なエセーを綴ろうと思っています。

 

 

freak42 - 五畳のサグラダ・ファミリア

2018年8月2日 投稿
友岡雅弥

 


東北地方には、珍しい教会がいくつかあります。例えば、山形の鶴岡力トリック教会は、100年以上前に建てられた国の重要無形文化財です。またフランスから伝えられた「黒いマリア」の像があります。

「黒いマリア」の像は、ルカが伝えるマリアは色が黒かったと言われ、おそらく他民族か、貧しいがゆえに、外での労働を余儀なくされたマリアの消息を伝えます。また、「黒いマリア」の像は、南アメリカやアフリカ各地で、植民地解放運動や、反独裁政権運動の象徴となっていました。

盛岡を中心として、ハシストス教会が多いのも、東北の特徴です。鶴岡カトリック教会は、畳敷きの教会ですが、他にも、地域に根ざした畳敷きの教会がいくつもあります。

さて、東日本大震災において、三陸沿岸地域の教会もいくつか大きなダメージを受けました。

特に、大きな被害を受けたのが、大船渡教会でした。

今、どの宗教教団もそうですが、社会の高齢化、人口減少の影響をもろ受けています。ほんとは、宗教団体や組合、自治会などが、「後退する社会」のセーフティ・ネットの役割を持つはずですが、ネットで「ピア・トゥ・ピア」、「ピア・トゥ・マス」の関係が文字通り、ハイパーインフレーションを起こしている今、小さなコミュニティで、いろんな人の話に耳を傾けながら過ごす時間がどんどん削られていきます。

しかも、日本の場合、社会コミュニティではなく、「会社コミュニティ」が膨れ上がり、しかも、それは成員の人生に責任を持たなくなったという、「構造改革」とやらの時代に一気に突入してしまったのです。

さて、震災にあたり、カトリック教会は大きな改革をしました。それまで、人事は教区単位で行われていました。東北は東北内で、とか。

それが、被災地のすべての教会に、他地域から司祭を赴任させたのです。

なかには、人口減少で、二つ、三つの教会を一人の司祭が担当していたのが、震災前の現状でした。


それが、どこよりも手厚く、遇したわけです。

大船渡教会は、信徒の居住範囲が壊滅的な打撃を受けた地域ですので、司祭が二人となりました。

例えば、典礼は一人が執行し、もう一人は信徒さんの家に安否確認に訪ね歩く。家が流されているところがほとんどです。だから、避難所へ、仮設住宅が出来たら、仮設住宅へ、しかも、遠くの親戚のところに行ってる信徒さんもいます。

典礼のないときは、徹底的に二人の司祭は歩きました。

そして、「大発見」をするのです。


この地域は、もともと「嫁不足」で、漁師の家や農家に、フィリピンから嫁いできた(「嫁」という漢字はいやですね。でも、ここは文脈から、これでいきます)女性がたくさんいたのです。

「嫁」として、家事を行い、農業、漁業の働き手となり、しかも、もともとのカトリックの信仰はできない。日本は「家の宗教」とやらが、ありましたから。

ただし江戸時代に、キリシタン禁制と身分差別の固定のためですが。


二人の司祭、また他の信徒さんも、つぎつぎと、避難所の片隅で、十分な日本語のコミュニケーションもままならない孤立した、フィリピン女性に遭遇していくんです。

もちろん、他の信徒以外の人たちへも救援物資を届けますが、特に、そのフィリピン女性たちは、孤立していた。

だから、教会に誘ったのです。

「信者の勧誘」ではないですよ。

教会で、少しでも、孤独感、不安感を和らげて欲しい。

最初は、一人、二人、そして20人ほどになりました。口コミで広がったのです。そして、そして、200人のフィリピン女性が来るようになったのです。

当然、ここなら、遠慮せずに、キリスト教の祈りができる。嫁ぎ先では、出来なかった祈りが。


なんか、「サンタ・マリアの御像はどこ?」と隠れキリシタン杉本ゆりが、1865年(元治2年)大浦天主堂を訪ねてきて、司牧プティジャンに問いかけた光景を連想させます。

そうして、大船渡教会は信徒数が、今までの2倍、200人になったのです。平均年齢が一気に(おそらく20歳ほど)若返ったのです。

しかも、教会の重要なきめごとを決めていく、教会委員会の中心メンバーに4人が参加しています。主体的に取り組んでいます。

「みんな気仙衆!」です。

ちなみに、気仙地方は、今の岩手県陸前高田市、大船渡市、住田町のあたりです。平安時代には、そこに、宮城県気仙沼市宮城県本吉郡も加わっていたとされます。


さて、問題は、信徒数が2倍になったのに、教会の広さは今までのまま、典礼には、人が外にまで溢れます。

それで、教会を拡張しようということになったのですが、問題は予算です。

予算となると、仙台の教区事務所に書類を出し、審議し、年間予算が立てられたなかで云々、ということになります。

「この際だ、 勝手にやるベア!」

気仙地域は、飛騨の高山と並ぶ、大工の名工の輩出地です。

でも、内緒でするのですから、予算はありません。被災している信徒さんたちが、善意のお金を持ち寄り、玄関とあと、五畳の広さの拡張工事を行いました。150万円です。

でも、みんな言ってます。

「おらどのサグラダ・ファミリアだ」

100年以上の歳月をかけているスペインのサグラダ・ファミリア教会にも匹敵する「五畳」だとは思いませんか?

 

 

 

 


解説
フィリピン女性たちは、孤立していた。

だから、教会に誘ったのです。

「信者の勧誘」ではないですよ。

教会で、少しでも、孤独感、不安感を和らげて欲しい。

 

いい話ですね。
友岡さんは、すでに排他的な宗派意識からは自由です。


友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 


獅子風蓮