公明党が政権を離脱して、高市内閣が発足しました。
日本維新の会と連立を組んだ自民党は、保守色を強めています。
公明党が与党でいることで政権内のブレーキ役を果たしていると言われてきましたが、図らずもそれを証明した形になっています。
少し古い本ですが、佐藤優氏と元公明党代表の山口那津男氏の対談本を読み返すことで、与党内で公明党が果たした役割について振り返ってみたいと思います。
もとより、公明党に都合のいいことしか書いてありませんが、そこは「内在的論理を読み解くため」です。
かいつまんで紹介します。
佐藤優・山口那津男「いま、公明党が考えていること」
(潮新書、2016.04)

□まえがき 佐藤 優
□第1章 公明党とはいかなる存在か
■第2章 公明党の「平和主義」の本質とは何か
□集団的自衛権と平和安全法制をめぐる公明党の戦い
■「七・一閣議決定」によって守った日本国憲法の平和主義
□「戦争法案反対」「徴兵制が始まる」は現実とは正反対の空想
□デモ行進に参加する反対派のおかしな主張
□「政権与党のブレーキ役」としての公明党の役割
□湾岸戦争の苦い経験からPKO参加へ転換した大きな決断
□公明党の根底に流れる「存在論的平和主義」
□「平和の党・公明党」の原点
□ソ連共産党がもっとも評価していた日本の政党・公明党
□池田SGI会長の傑出した日中外交、日ソ外交
□朴槿恵大統領、習近平国家主席と対話のチャンネルを開いた山口代表
□習近平国家主席と計5回会談した日本で唯一の政治家
□「政治的野心」を超克した大局観と中道外交
□日韓友好の橋渡しをする150万人の韓国SGIメンバー
□尖閣諸島問題を「棚上げ」にした周恩来総理の英断
□「人間の安全保障」と公明党の存在論的平和主義
□人間主義と対話に根ざしたテロリズムとの戦い
□SGIの世界宗教化と公明党の与党化
□第3章 軽減税率と中小企業対策
□第4章 福祉の党「公明党」が描く日本の未来
□第5章 地方創生と震災復興
□あとがき 山口那津男
第2章 公明党の「平和主義」の本質とは何か
「七・一閣議決定」によって守った日本国憲法の平和主義
佐藤 2014年7月1日の閣議決定に至るまで、どこが一番大変でしたか。
山口 「日本の安全保障を国際社会の枠組みに合わせるべきだ」という圧力です。個別的自衛権、集団的自衛権とは、あくまでも国際法の中で言われる概念ですよね。日本国憲法の範囲内でどこまで自衛権を行使することが許されるのか。憲法の枠を飛び出さないようにきっちり基本を決めておかなければ、国際社会からの圧力に日本が引きずられてしまいます。国際社会が集団安全保障を行なうときに、日本国憲法に合う部分があれば共に行動してもよい。ただし憲法を逸脱してまで、日本が国際的な流れに追随してはならない。閣議決定によって、そこをきっちり固めたことが大事です。
佐藤 あの閣議決定の精神はいまもまったく変わっていませんよね。
山口 変わっていません。
佐藤 重要な発言です。先ほどの『公明新聞』にはこういう記述もあります。
〈外国の防衛それ自体を目的とする、いわゆる集団的自衛権は、今後とも認めない。憲法上、許される自衛の措置は自国防衛のみに限られる。いわば個別的自衛権に匹敵するような事態にのみ発動されるとの憲法上の歯止めをかけ、憲法の規範性を確保した。〉
ここのところも、いまも変わっていませんよね。
山口 変わっていません。集団的自衛権とは、あくまでも国際法の中での考え方だと先ほど申し上げました。自分の国を守るための武力行使も、仲の良い他国を守るための武力行使も、国際法では両方認められています。でも日本国憲法では、あくまでも日本を守るために武力を使うことだけが許されているわけです。他国を守るための武力行使、集団的自衛権は認めていません。この点については、安倍総理もはっきり説明しています。
佐藤 自民党の一部には、ホルムズ海峡への掃海艇派遣にやたらと固執する人がいます。オマーンの領海内であるあの国際航路帯に、どの国が機雷を敷設するというのでしょう。「イスラム国」(IS)は海軍をもっていませんから、海に機雷は仕掛けられません。イランとアメリカは「イスラム国」対策では提携しつつありますし、イランとオマーンも良好な関係です。
要するに公明党は「海上自衛隊の掃海艇が紛争中に中東まで出ていくことなど現実的にはありえない」と言っているのであって、元外交官の私から見ると、この説明には非常に説得力があります。
山口 さすが佐藤さんですね。日本が他国で機雷を掃海しなければならない事態が起きるとは、現実にはほとんど考えられません。繰り返しになりますが、私たちは集団的自衛権が日本国憲法、国内法の枠組みから逸脱しないように、極めて厳格な政策判断をしているのです。
【解説】
〈外国の防衛それ自体を目的とする、いわゆる集団的自衛権は、今後とも認めない。憲法上、許される自衛の措置は自国防衛のみに限られる。いわば個別的自衛権に匹敵するような事態にのみ発動されるとの憲法上の歯止めをかけ、憲法の規範性を確保した。〉
佐藤氏はこのように『公明新聞』を引用し、絶賛している。
しかし、これはあくまで創価学会・公明党の側の言い分であり、それを鵜呑みにして公明党をよいしょするのは、いかがなものでしょう。
私は別のところ(獅子風連の夏空ブログ)で、柳原滋雄氏のブログを引用して記事を書いていますが、その中で中野潤『創価学会・公明党の研究』(岩波書店 2016)が紹介されていました。
この本では、もう少し客観的な視点から14年7月1日になされた閣議決定についての創価学会・公明党のバタバタした対応が生々しく書かれています。
詳しくは、後日紹介したいと思います。
* * *
ちなみに、「七・一閣議決定」そのものを読んでみました。
国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法 制の整備について
そのうち、集団的自衛権に言及したものは次の箇所でした。
3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置
(4)我が国による「武力の行使」が国際法を遵守して行われることは当然であるが、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである。
公明新聞では「いわゆる集団的自衛権は、今後とも認めない」と明確に言い切っていますが、「七・一閣議決定」の文言は、「あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである」ならば、そのような存立危機事態では集団的自衛権が行使できるとも読めるような玉虫色の表現になっています。
獅子風蓮