
佐藤優氏を知るために、初期の著作を読んでみました。
まずは、この本です。

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた―。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行。
国家の罠 ―外務省のラスプーチンと呼ばれて
□序 章 「わが家」にて
□第1章 逮捕前夜
□第2章 田中眞紀子と鈴木宗男の闘い
□第3章 作られた疑惑
□第4章 「国策捜査」開始
□第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」
■第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ
□拘置所の「ゆく年くる年」
□歴史に対する責任
□確定死刑囚
□三十一房の隣人
□保釈拒否の理由
□友遠方より来たる
□保釈と別れ
□「国家秘密」という壁
□東郷氏の「心変わり」
■論告求刑
□被告人最終陳述
□判決
□あとがき
□文庫版あとがき――国内亡命者として
※文中に登場する人物の肩書きは、特に説明のないかぎり当時のものです。
第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ
論告求刑
2004年10月12日、検察官が約3時間に及ぶ論告求刑を行った。論告の中から興味深い部分を抜き出してみたい。
〈ゴロデツキー夫妻招聘及び国際学術会議参加は、被告人が、ゴロデツキーとの個人的関係を構築することにより外務省内における自らのロシア専門家としての評価を高め、将来の人事面での優遇をも意図したものである。被告人は、その各費用につき委員会資金を使用することが協定に違反することを熟知しながら、前島に指示し、これを実行させたものであって、被告人が本件犯行の主犯であることに疑念の余地はなく、しかも、有能な後輩外交官をも犯罪に巻き込んだ点も厳しく弾呵すべきであって、被告人の刑責は極めて重大である。(中略)
被告人は、北方四島の事情に精通した三井物産に本件工事を受注させることが日本の国益にかなうと考えた旨供述している。仮にそのような考えがあったとしても、本件違法行為を何らに正当化するものでないことは明らかであり、これをもって酌量すべき事情であったとは言い難い。また、三井物産が本件工事を受注できたのは、何よりも、被告人において、鈴木議員から、同社に北方四島発電施設設置工事を受注させることについて、その了解を取り付けたこと、さらに、前島に対して本件工事の積算価格を漏洩するように指示したことによるのであって、被告人の役割は重要かつ不可欠なものであったと言わざるを得ず、被告人の刑責は極めて重要である。(中略)
加えて、官と財との悪しき癒着が白日のもととして露されたことで国民の外交行政、対ロシア外交に不信の思いを抱かせたことは、極めて重大であり、これにより日本の対外的信義・信用が著しく損なわれたことも疑いのないことであり、その社会的影響も極めて深刻である。被告人には反省の情が認められない。被告人は、当公判廷において、公訴事実の全てを否認して執拗に争っているもので、その応訴態度に照らせば、反省の情を認めることはできない〉
検察の論告のうち「被告人には反省の情を認めることができない」という部分については、私の認識と完全に一致している。
西村検事の事前予告通り、求刑は懲役2年6カ月だった。
【解説】
検察の論告のうち「被告人には反省の情を認めることができない」という部分については、私の認識と完全に一致している。
ここはどうなんでしょう。
これまで検証してきたように、本書を読んだ限りにおいても、佐藤氏は自分の手を汚さないで前島氏に三井物産のことをよろしく頼むと言っており、道義的責任はあったのではないかと私は思います。
イスラエルの教授招聘と学会参加の費用については、その金額が膨大であることと国際委員会の資金を流用するにあたって鈴木宗男氏の力を利用したと思われてもしかたないと思われました。
そのことを一切反省しないというのでは、裁判官の心証を悪くしたのもやむを得なかったと思われます。
獅子風蓮