最初のころ、私は乙骨正生氏の著書「怪死……」を読んで、女性市議転落に創価学会がかかわっているという疑惑があることを知りました。
このブログでも連載しました。
しかし、別のところ(獅子風蓮の夏空ブログ)でも書きましたが、宇留嶋氏のブログと著書を読み、考えを改めました。
そこで、この本を紹介したいと思います。
宇留嶋瑞郎(うるしま・よしろう)
『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』
ユニコン企画・発行
長崎出版株式会社・発売
(1998.03)
目次
第一章 当選返上
第二章 矢野という「草の根」の来歴
第三章 万引き事件発生
第四章 錯誤と悲痛
第五章 転落死と空白の2時間
□朝木明代が行方不明?
□他殺の材料は発見されず
□警察は事件性薄いと判断
■矢野の涙声の意味
□一気に過熱した一部マスコミ
□自殺説を否定するために
□直子はついに現れず
第六章 小さな正義
第七章 捜査終結から逆転判決へ
あとがき
第五章 転落死と空白の2時間
矢野の涙声の意味
司法解剖の書類に「殺人被疑事件」と書いてあるのはごく当たり前の話で、それをもって「殺人」と断定されたわけではないのも当然である。行政解剖ですんだはずのものを、警察がわざわ司法解剖に切り換えた事情については前述のとおりである。
矢野と報道者の思い入れのほかに、明代の自殺を肯定するものも、否定するものも一切存在はしないことがよくわかるだろう。もちろん、矢野の思い入れの背景も語られてはいない。ただ突然、元参院議員の故市川房枝氏の話が出てきたりして、あたかも明代が、その直系かのような矢野談が語られたりする。要するに、①朝木の万引きは冤罪であり、自殺するような動機はない。②したがって他殺だ。③しかも最近身辺に妙な出来事が頻発していて、靴もカギも出てこないところをみると、第三者が介在しているに違いない。④第三者とは朝木が問題にしていた創価学会だ――と矢野は主張したのである。もとより、朝木がブティック「スティル」で万引きを働き、矢野とともにアリバイ工作を行ったことを誰より知っているのは、ほかならぬ矢野自身である。明代は現に転落死する4日後に検察への出頭をひかえていた。矢野が追いつめられた明代の現実を知らないということはあり得なかった。ということは、本来ならこの時点、人情としての矢野の涙はもっとほかに向いているはずだということだった。
もちろん、矢野にとって、明代の転落死が自殺であってはならなかった。明代が自殺したとなれば世間はどう見るか。やはり万引きは本当だったと見るのは明らかだ。しかも、明代は、ただ万引きを否定していただけではない。矢野も一緒になってアリバイを主張し、一方では創価学会の陰謀といい続け、「スティル」の戸塚節子には明代の万引きデッチ上げの濡れ衣を着せ、名誉棄損で告訴までした。これはすでに週刊誌などで大きく報道されている。もとより、明代は最初から、謝っておけば死なずにすんだのかもしれない。そう思うのももとより人情だ。それなのに、矢野はなぜ明代と一緒になってアリバイまで主張したのか――。
きっと世間はこういうだろう。明代の万引きはすでに矢野にとって屈辱どころの騒ぎではなくなっていた。矢野が万引きのアリバイ工作に深くかかわり、それが最終的に明代の死につながったことを矢野は強く意識していた。おそらく、矢野はそれをさとられることを最も恐れた、と。
明代が死んだことでもとより、矢野にはアリバイ工作とともに、明代の死の真相についても自己利害をかけて隠蔽しなければならなくなったのである。このインタビューで、矢野が涙声になっているのは自分のみっともなさを含め、ことさらに同情を買うべき部分と、突っ込まれてごまかさねばならなくなった部分である。矢野の涙は明代のためのものではなく、自分自身を考えるためのものにすぎなかったともいえよう。
おそらく、矢野は明代の万引きのおかげですでに取り返しがつかない事態に至っていることを十分認識はしていた。9月1日夜9時19分、明代からかかってきた電話でのやり取りは次のようなものだった(これは当時、「草の根」事務所で録音されていたものとして、のちにTBS『ニュースの森』でも流された)。
矢野 もしもし。
朝木 あ、もしもし。
矢野 話し中。
朝木 あ、はいはい。ちょっと気分が悪いので休んでいきます。
矢野 はい、はい、はい。
キャッチホンだったとはいえ、たったこれだけである。
矢野は文化放送のインタビューで明代の電話の様子が明らかにおかしかったと語っている。しかし、そのとき矢野が明代に話したのは「もしもし」と「話し中」と「はい、はい、はい」だけだ。心配するどころか、実際はむしろ冷たく突き放すような調子である。
矢野が実際に明代を心配していたのなら、あとで電話の一本ぐらいかけてもよかった。しかし、矢野が明代に電話をかけた様子はない。矢野はやはりインタビューでもその点を突かれた。
「矢野議員に助けを求めるようなかたちでですね、電話をしてきたということは想像できませんか」。
しかし、答えは別の方向に導かれた。
「要するにですね、薬物をかがされたとか飲まされたということでもなければ、そんな急変するということはありません」。
録音を聴き直すと、インタビューの中で矢野が完全に目先を変えたのはこの箇所だけである。何の気遣いの様子も見せず、その後明代に電話もかけなかった矢野にとって、不意をつかれた質問だったようである。まさに妙な事件といえよう。
【解説】
おそらく、矢野は明代の万引きのおかげですでに取り返しがつかない事態に至っていることを十分認識はしていた。9月1日夜9時19分、明代からかかってきた電話でのやり取りは次のようなものだった(これは当時、「草の根」事務所で録音されていたものとして、のちにTBS『ニュースの森』でも流された)。
矢野 もしもし。
朝木 あ、もしもし。
矢野 話し中。
朝木 あ、はいはい。ちょっと気分が悪いので休んでいきます。
矢野 はい、はい、はい。
キャッチホンだったとはいえ、たったこれだけである。
矢野は文化放送のインタビューで明代の電話の様子が明らかにおかしかったと語っている。しかし、そのとき矢野が明代に話したのは「もしもし」と「話し中」と「はい、はい、はい」だけだ。心配するどころか、実際はむしろ冷たく突き放すような調子である。
矢野が実際に明代を心配していたのなら、あとで電話の一本ぐらいかけてもよかった。
たしかにこの矢野と朝木のやりとりは、朝木が自殺に至る心証としては十分理解できますね。
獅子風蓮