獅子風蓮のつぶやきブログ

創価を卒業し、組織にしばられず、いろいろ考えたりしたことや、読書感想などを書いています。

池上彰/佐藤優『プーチンの10年戦争』を読む その39


佐藤優氏のことば。

言うまでもないことですが、ロシアがやっていることは間違っています。独立国家であるウクライナにいきなり軍事侵攻を仕掛けるなど、どんな理由があっても既存の国際法では認められません。
そのうえで、ロシアにはロシアの論理がある。プーチンの演説を丹念に読み解く作業を通じて、読者の皆さんには「プーチンの内在的論理」に耳澄ませてほしいのです。私たちは「ウクライナ必勝」と叫ぶ必要はないし、プーチンを悪魔化して憎むのも良くない。両国で暮らす一人ひとりの人間に思いを致し、一刻でも早く戦争をやめさせなければなりません。

そこで「ロシアの論理」を知るために、こんな本を読んでみました。
一部、かいつまんで引用します。

池上彰佐藤優プーチンの10年戦争』(東京堂出版、2023.06)

日本では詳しく報じられたことがない20年にわたるプーチンの論文や演説の分析から戦争の背景・ロシアのねらいを徹底分析。危機の時代の必読書!1999―2023年のプーチン大統領の主要論文・演説、2022年のゼレンスキー大統領の英・米・日本国会向けの演説完全収録!

 

プーチンの10年戦争』

□はじめに ジャーナリスト池上彰
□第1章 蔑ろにされたプーチンからのシグナル
■第2章 プーチンは何を語ってきたか
 __7本の論文・演説を読み解く
 □①「千年紀の狭間におけるロシア」(1999年12月30日)
 □②「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」(2021年7月12日)
 □③大統領演説(2022年2月21日)
 □④大統領演説(2022年2月24日)
 □⑤4州併合の調印式での演説(2022年9月30日)
 ■⑥ヴァルダイ会議での冒頭演説(2022年10月27日)
  □対ウクライナ戦争から、対西側の価値観戦争へ
  □西側の「キャンセル・カルチャー」は誰も幸福にしない
  □西側はドストエフスキーチャイコフスキーまで排斥しはじめている
  □ロシアから発信されるものは、すべて「クレムリンの陰謀」か
  □ロシアは、他人の裏庭には干渉しない
  ■西側一極集中から脱却し、人類文明のシンフォニーを構築しよう
  □トルコ・サウジアラビアとは信頼関係を構築

 □⑦連邦議会に対する大統領年次教書演説(2023年2月21日)

□第3章 歴史から見るウクライナの深層
□第4章 クリミア半島から見える両国の相克
□終 章 戦争の行方と日本の取るべき道
□おわりに    佐藤 優
□参考文献
□附録 プーチン大統領論文・演説、ゼレンスキー大統領演説

 


第2章 プーチンは何を語ってきたか
 __7本の論文・演説を読み解く

⑥ヴァルダイ会議での冒頭演説(2022年10月27日)

西側一極集中から脱却し、人類文明のシンフォニーを構築しよう

佐藤 そして講演の最後に、今が歴史の分岐点であるという認識を示し、西側一極集中から脱却して新しい世界秩序を構築しなければならないと説きます。

ソ連の崩壊は、地政学的な力のバランスも破壊した。西側は己を勝者だと感じ、自分たちの意思、文化、利益のみが存在する権利を持った一極的な世界秩序を宣言した。
今や、世界情勢における西側の独占的な支配は終わりつつあり、一極化の世界は過去のものになろうとしている。我々は歴史の岐路に立っており、この先には、第二次世界大戦後、おそらく最も危険で予測不可能な、それと同時に最も重要な10年がある。西側は単独で人類を支配することはできないにもかかわらず、必死にそうしようとしており、世界の人々の大半はもはや、この状況を我慢する気はないのだ。ここに新たな時代の大きな矛盾がある。古典の言葉を借りれば、状況はある程度、革命的なものになっている。古典の言葉を借りれば、もはやこうした生活を上流階級は送ることができないし、下層階級はそんな生活を送りたくないのである〔レーニンの言葉をもじったものと思われる〕。
このような状態は、世界的な紛争、あるいは紛争の連鎖を伴い、西側自体を含む人類にとっての脅威である。この矛盾を建設的かつ創造的に解消することが、今日の主要な歴史的課題なのだ。
時代の変化は、痛みを伴うものではあるけれど、自然で必然的なプロセスである。未来の世界秩序が我々の目の前で形づくられている。そして、この世界秩序において、我々はすべての人の言うことに耳を傾け、あらゆる民、あらゆる社会、文化、そして、あらゆる世界観、思想、宗教的概念の体系を考慮に入れ、誰にも単一の真実を押しつけることなく、この基盤の上にのみ、運命、すなわち人々、地球の運命を理解した上で、人類文明のシンフォニーを築かなければならないのである。〉

西側の資本主義国だけを見ても、今は格差が拡大しています。まさに「こうした生活を上流階級は送ることができないし、下層階級はそんな生活を送りたくない」という状況です。経済的な勝者はアメリカとドイツだけで、それ以外は軒並み衰退しつつあります。その意味でも、プーチンの「西側一極集中でいいのか」という問いかけは的を射ています。
特に日本の状況は深刻です。石油、天然ガスなどのエネルギーや食料、肥料は海外からの輸入に頼らざるを得ませんが、いずれも価格の高騰と円安が重なって国内にインフレをもたらしています。その一方で、大幅な賃上げは期待できません。つまり国民の暮らしは厳しくなるばかりということです。
またアメリカやイギリスは、金融と情報産業のプラットフォームを形成することで、一部の富裕層限定ながら巨万の富を手にしています。ただし、モノをつくり出す産業力はとうの昔に衰退したまま。その構造が、戦争を継続する上では明らかに不利に働くでしょう。

池上 その点、ロシアは強いですよね。今回のウクライナ戦争で明らかになったのは、GDP(国民総生産)では韓国程度の水準のロシアが、西側連合から本格的な経済制裁を受けても持ちこたえているという現実です。たしかに国内のエネルギー資源は豊富だし、穀物も生産できる。さらに兵器を含むモノの生産力もある。
これはロシアだけではなく中国にもいえることです。こういう国家の強靭さを過小評価してはいけません。

佐藤 注目すべきはイスラエルの動きです。アメリカと政治面、軍事面、経済面できわめて良好な関係にありますが、今回のロシアへの制裁には参加していません。ロシアの国力をイスラエル指導部が冷静に見きわめて判断しているからでしょう。

 

 


解説

経済的な勝者はアメリカとドイツだけで、それ以外は軒並み衰退しつつあります。その意味でも、プーチンの「西側一極集中でいいのか」という問いかけは的を射ています。

 

だとしても、それはウクライナ戦争を起こした理由にはなりません。

 

獅子風蓮