獅子風蓮のつぶやきブログ

創価を卒業し、組織にしばられず、いろいろ考えたりしたことや、読書感想などを書いています。

池上彰/佐藤優『プーチンの10年戦争』を読む その54


佐藤優氏のことば。

言うまでもないことですが、ロシアがやっていることは間違っています。独立国家であるウクライナにいきなり軍事侵攻を仕掛けるなど、どんな理由があっても既存の国際法では認められません。
そのうえで、ロシアにはロシアの論理がある。プーチンの演説を丹念に読み解く作業を通じて、読者の皆さんには「プーチンの内在的論理」に耳澄ませてほしいのです。私たちは「ウクライナ必勝」と叫ぶ必要はないし、プーチンを悪魔化して憎むのも良くない。両国で暮らす一人ひとりの人間に思いを致し、一刻でも早く戦争をやめさせなければなりません。

そこで「ロシアの論理」を知るために、こんな本を読んでみました。
一部、かいつまんで引用します。

池上彰佐藤優プーチンの10年戦争』(東京堂出版、2023.06)

日本では詳しく報じられたことがない20年にわたるプーチンの論文や演説の分析から戦争の背景・ロシアのねらいを徹底分析。危機の時代の必読書!1999―2023年のプーチン大統領の主要論文・演説、2022年のゼレンスキー大統領の英・米・日本国会向けの演説完全収録!

 

プーチンの10年戦争』

□はじめに ジャーナリスト池上彰
□第1章 蔑ろにされたプーチンからのシグナル
□第2章 プーチンは何を語ってきたか
 __7本の論文・演説を読み解く
□第3章 歴史から見るウクライナの深層
■第4章 クリミア半島から見える両国の相克
 □ロシアによる併合を住民はどう受け止めたか
 □クリミア戦争の舞台として
 □軍事衝突は予見されていた
 □なぜフルシチョフウクライナに譲渡したのか
 ■ウクライナの学校教育は偏っていた
 □民族のアイデンティティより、「生存していくこと」を選択
 □クリミア大橋爆破事件がもたらした、深刻な報復

□終 章 戦争の行方と日本の取るべき道
□おわりに    佐藤 優
□参考文献
□附録 プーチン大統領論文・演説、ゼレンスキー大統領演説

 


第4章 クリミア半島から見える両国の相克

ウクライナの学校教育は偏っていた

池上 併合後のクリミアの話に戻りますが、学校ではカリキュラムがウクライナ型からロシア型に変わったとのことでした。

佐藤 それも欧米から非難の対象になりましたね。ではウクライナがどういう教育を行っていたか、どれくらい知られているでしょうか。多くの人は知らないでしょう。
例えば歴史教科書を見ると、ウクライナ西部のガリツィア地方はフランス人の祖先の地であり、ローマ帝国の英雄ユリウス=カエサルが記した『ガリア戦記』の舞台であり、さらにユダヤ人の発祥地でもあったりする。要するに史実を無視して、我らこそが優越した民族であると誇っているわけです。だからロシアは、占領地での教育に関して教科書から改めた。これには必然性がありますよね。

池上 私が訪ねた学校はエリート校でしたが、併合前は「ウクライナ語」の授業が週に2コマ、「ウクライナ文学」も2コマでいずれも必修、それに「ロシア語」が1コマでした。しかし併合後は、「ウクライナ語」が1コマで選択科目になり、「ウクライナ文学」は「ロシア文学」に代わったとのこと。ただし「ロシア文学」の中にはウクライナ文学も含まれるそうです。ウクライナにまつわる教育が完全に排除されたわけではないんですよね。

佐藤 そのとおりです。むしろウクライナの特殊な教育や歴史観に問題がある。その典型が、本書の2章でも触れたステパン・バンデラという歴史上の人物への評価です。フランスの国際政治学者・政治思想家マルレーヌ・ラリュエルが著書『ファシズムとロシア』(東京堂出版)でも触れていますが、20世紀前半を生きたバンデラは、ポーランドソ連、最終的にはドイツも相手にウクライナ独立解放運動を主導したリーダーでした。一方で、独ソ戦の初期にはソ連に対抗するため、一時期ナチス・ドイツに協力しています。またその一環として、反ポーランド、反ユダヤ、反ロシアの運動も展開しました。
したがって当然、戦後のソ連邦時代のバンデラは、間違いなくファシストであり、「人民の敵」でした。しかし1991年の独立後、ウクライナ国内では少しずつ名誉回復が図られていきます。ダークサイドにはあまり言及されず、「国家の英雄」として讃えられるようになったのです。
ラリュエルによれば、その流れはユーロマイダン革命以降に加速したとのこと。「解放運動研究所」というバンデラ一派の活動を称揚する組織が歴史記述を管理し、逆に共産主義的な活動の一切を禁じるほど先鋭化しています。国家を急いで建設する上で、民族のシンボルになるような存在が必要だったのでしょう。

池上 こうして見ると、いかにロシアとウクライナが互いに複雑な歴史問題を抱えているかがよくわかります。そういう実態も知った上で、私たちは冷静に判断しないといけません。単純にどちらが悪い・どちらが正しいと結論づけ、耳を塞いでしまうのではなく。

 

 


解説

池上 こうして見ると、いかにロシアとウクライナが互いに複雑な歴史問題を抱えているかがよくわかります。そういう実態も知った上で、私たちは冷静に判断しないといけません。単純にどちらが悪い・どちらが正しいと結論づけ、耳を塞いでしまうのではなく。

 

ここは納得できます。

 

獅子風蓮